IT日記

Webエンジニアの徒然草

人工知能狂想曲

ここ数年、人工知能関連の話題が盛り上がっている。

Google人工知能テクノロジーを有するスタートアップを買収した、Facebook人工知能研究所を設立した、などである。

この人工知能ブームの発端となったのは、2012年にトロント大学のヒントン教授が率いるチームが参加した画像認識の正答率を競うコンテストである。ヒントン教授らは深層学習という手法を用い、他の参加者はもちろん、過去の同分野の実績を圧倒するパフォーマンスを叩き出した。そして、この深層学習を画像認識のみならず他の分野に展開する動きが活発になり、深層学習に限らず人工知能全般に注目が集まりだした、というのが事の経緯なのだ。

こうしたブームに便乗し、前述した大企業のみならず、人工知能というバズワードを売り文句にしたいくつかのスタートアップ企業も出現しているようだ。注目されている分野であれば、投資家からも資金を調達しやすかろう。その数が増えるのも当たり前である。

もっとも、学術的な研究成果が出たからといって、それが産業界における実利に結びつくとは限らない。ましてや、前述の深層学習などかなり専門的な手法である。学術的なバックラウンドを持たない単なるエンジニアに使いこなせる代物ではない。その上、画像認識や音声認識など特定領域を除いて、現状、それほど画期的な成果は見られていない。

注目度の割には、さしたる商業的成功は聞こえてこないのが人工知能の実情である。特にベンチャー投資の分野においては、一過性のバブルの様相を呈しているというのが実感だ。人工知能技術を大きな利益にまで結びつける新興企業はおそらくごく少数に過ぎない。

ちなみに、人工知能は過去に期待が集まっては技術的な壁にぶち当たり失望されるという歴史を2度ほど繰り返している。歴史的に狼少年の如き不遇をかこってきた研究分野なのである。冬の時代にも連綿と続いてきた地道な研究成果の上に今があるのだ。

今回は第3次ブームである。そして、そのブームも、こと産業界においては少し成熟してきた感がある。

次のスタートアップ界隈の神輿はFinTechあたりであろうか。内実の有無を問わずに盛り立てるのは、IT業界が虚業と言われる所以にも思える。