IT日記

Webエンジニアの徒然草

堅実な投資法

少子高齢化、財政難の日本における公的年金制度に懸念が表されているのは今に始まった話ではない。日本の国民年金・厚生年金は過去の積立金の運用益から支払われる積立方式ではなく、現役世代から徴収した金から主に支払われる賦課方式である。

そのため、少子高齢化の歪んだ人口構成においては制度破綻を避けるために、現役世代一人当たりからの徴収額の増加とともに、年金支給開始年齢の引き上げや支給の減額といった措置が取られる。

つまり、今働いている労働者は徴収額が今までより増えるわりには、将来もらえる年金が今より少なくなっているという訳だ。引退後に悠々自適な生活が送れるのは、一部の富裕層を除いてありえない。

紹介図書は、そうした状況への一つの対策を示してくれる。本書で勧めるのはインデックス投資と呼ばれる手法であり、日経平均TOPIXといった株式指標に連動した投資信託へ投資する手法だ。

上記のような株式指標は市場平均とも呼ばれる。インデックス投資は平均に連動させることを目指したものであり、他に比べて大勝ちも大負けもない。また、いったん投資してしまえば他にやることもあまり発生しない。個別の株式を選別するための丹念な銘柄分析も、デイトレーダーよろしく株価や為替のチャートに張り付いて売買を繰り返す手間も不要なのだ。

インデックス投資以外の、能動的に個別株式や不動産・外貨などを選別し、市場平均を超えることを目指す手法はインデックス投資と比してアクティブ投資と呼ばれる。アクティブ投資を行うファンドの6、7割は市場平均に打ち負かされるという。そして、そうしたアクティブファンドの手数料は、そのお粗末な勝率にも関わらずインデックスファンドよりも割高だ。

インデックス投資は無難で面白味もないが、手間もかからず他よりもはるかにマシな手堅い投資手法なのである。

メディアには老後破産、年金破綻などといったセンセーショナルな言葉が並ぶ。しかし、そうした風潮に不安に駆られ、金融機関の営業担当者の口車に乗せられて割高なアクティブ投資や民間の年金保険に金を出す前に、その金融商品が本当に有利なものかはよく考えたほうがいい。

日本の社会保障制度に課題があるのは事実だが、不安を煽って割高な商品を買わせようとするのはマーケティングの常套手段だ。金融機関の営業担当者の目的は利益を出すために顧客から手数料を多く掠めとることであり、彼・彼女らは決して顧客の味方ではない。

もっとも、インデックス投資も決して万能ではない。株というリスクある資産に投資する以上、目減りすることもある。本書でも、年間で、良い時は4割近く利益が出ることもあれば、悪ければ3分の1ほど資産が目減りし、均せば5%ほどの利益が期待できる、と説く。

裏目が出た時のため、当座の生活資金をいくらか別に取っておく必要があるのだ。また、悪い時に3分の1ほど目減りすると言ってもその数字はあくまで目安であり、それ以上に価値が暴落することもあり得なくはない。そして、まともな金利もつかない銀行預金などよりははるかにマシなリターンが期待できるとはいえ、その性質上、一攫千金は望めない。一山当てて早々な引退を目指せるようなものではないのだ。

潤沢な運用資金を有する者でなければ、インデックス投資だけで飯を食うことは難しい。そして、アクティブ投資でインデックス投資に勝るリターンを得ることも、もちろん容易ではない。少額な資産しか持たぬ一般市民は投資などに走るよりも、本業に精を出した方がよほど効果的というのが現実だ。

どの程度の生活水準を望むか次第だが、たとえインデックス投資といえど、単独で老後の生活資金を支えるものには通常なり得ない。定年後も何らかの形態で雇用されて賃金を得る、零細でも良いので独立して利益を生むなどのセカンドキャリアを模索することが、ある意味自分への一番の投資なのだろう。

 

全面改訂 ほったらかし投資術 (朝日新書)

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